きょうもナイスな酒で おいしかるかる~って感じの坂戸屋四代目むかさ陽一の日記っす~


by yomukachan
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グレイスワイナリーからのメール5

『グレイスワイン』醸造元、
中央葡萄酒の三澤彩奈さん留学記part5

↓以下メールより抜粋↓
■ボルドー留学記  「神様にまた会いたいな」 
 (2005年12月10日 朝日新聞より抜粋)

今回は、また会いたいなと思う男性のお話をします。
世界的なワインの産地ブルゴーニュ地方の造り手たちからも絶大な信頼を集めているピエール・オベルノワさん。既に引退していますが、自然派ワイン造りの「神様」と呼ばれている方です。

彼のワインに初めて会ったのは、9月の初め、ブルゴーニュ地方のレストランでした。シャルドネ種からつくった白ワインは、今までに味わったことがない、不思議な味わいがしました。翌日、ブルゴーニュ大学の食堂で日本人留学生仲間の女性醸造家とお昼を食べながら、そのワインについて私は話をしました。「会ってみたいね、その神様に」。友人の一言で、私たちは、フランス東部ジュラ地方の街アルボワまで足を運ぶことを決めました。

ジュラ地方は、サヴォワ地方の北に位置し、スイスとの国境にそびえる山々の美しい地方で、「コンテ」という名のチーズでも知られています。バスを乗り継いで、アルボワに到着したまではよかったのですが、「神様」の住むピュピヤンという村までは、アルボワからさらに3キロ山道を登らなければなりませんでした。ヒッチハイクもままならず、それでも、山々の移り行く景色が目を奪うので、それに助けられ、村までなんとか到着しました。

約束を取り付けていなかった私たちは、今さらながら後悔をしながらも、玄関のベルを鳴らしました。「いらっしゃらないかもしれないな」と不安を募らせる私たちの目の前に現れたのは、目の澄んだ、とても愛らしいおじいちゃんでした。「入りなさい、入りなさい」。彼がピエール・オベルノワその人でした。彼のコテージに招待してもらい、自作のパンや野菜をごちそうになりながら、彼の人柄や生活から生まれるワインが人をひきつけてやまない理由が、分かってきました。

彼のワインづくりは、自然とともに生きる彼の生活によく似ています。自然のものを食し、自然と暮らす心温まるムッシュが、ワインの酸化防止などに使う亜硫酸、化学肥料を当たり前のように使わないのです。自然であることが彼の人生であり、自然な造りのワインはその一部だったのです。

私は今まで、ワインは味わいこそが本質的で、歴史や、付随するストーリーと混同されるべきではないと、心のどこかで思っていました。一度頭の中で消化されたワインは、本当においしいのかどうか分からなくなってしまうからでした。でも、オベルノワさんと出会い、やっぱりワインは人間と自然に造りだされるものであると再認識されられました。

その次の週、彼の蜂蜜づくりに参加した私に、彼は「先週、事故でスズキ(彼の愛車)が廃車になってしまってね...」と悲しそうに言ってきました。私はほぼ無傷の彼を見て、やっぱりこの人は「神様」だとしみじみ思ったのでした。
by yomukachan | 2006-01-14 17:12 | ワイナリー